腰の痛み
腰の痛み

腰への負荷が続いたり外力が加わることによって椎間板の外側(線維輪)が傷つき、椎間板の中身であるゼリー状の髄核(ずいかく)が、後ろや横に飛び出してしまう病態を腰椎椎間板ヘルニアといいます。突出した部分(ヘルニア)が神経を圧迫し、腰やでん部、下肢にしびれや痛みが起こります。背骨が横に曲がって、動きにくくなったり、重いものを持ち上げたときに強い痛みを伴ったりすることもあります。幅広い世代で発症します。発症の要因には、腰に過度な負担がかかる重労働や激しいスポーツ活動が挙げられますが、加齢による椎間板の脆弱化、遺伝的要素、喫煙との関連性も指摘されています。
治療では、強い痛みがある時期はコルセットを装着して安静を心がけ、消炎鎮痛剤、坐薬、神経ブロック(炎症を抑える薬剤の注射)などで痛みを緩和します。痛みが軽くなれば、牽引や運動療法を行います。これらの保存的治療を2~3か月行っても症状が改善しない場合や、痛みをすぐに取り除きたいといった場合には手術が選択されます。椎間板ヘルニアは、神経の麻痺症状(足、足首、足の指があがらない、排尿障害がある)がなければ保存的な治療で症状が緩和することがほとんどです。手術では、椎間板から飛び出して、神経を圧迫している髄核を取り除きます。
近年では、MED(内視鏡下椎間板摘出術)やPED(経皮的内視鏡下椎間板ヘルニア摘出術)といった内視鏡による低侵襲手術も広く行われるようになっています。また、髄核に薬剤を直接注入する椎間板内酵素注入療法(ヘルニコア)という治療法もあります。
腰痛の多くは、腰椎に負担がかかることで起こりますが、他にも様々な原因があります。また以下のような病気が背景になっている場合もあります。安静にしていても痛みが軽くならない、あるいは悪化する、発熱がある、しびれて力が入らない、といった症状を伴う場合は、放置せずに整形外科を受診してください。多くの場合、日常生活の姿勢や使い方などに問題があります。医師、理学療法士による指導などが非常に有効なことが多いため、一度受診することをお勧めします。
背骨(せぼね)は、椎骨(椎体、椎弓)とそれをつなぐ椎間板、後縦靭帯、黄色靭帯、棘間靭帯などで構成されており、その内側には脊髄の神経が通る管状の脊柱管があります。腰部脊柱管狭窄症は、加齢や重労働、反復する負荷などによって椎間板や椎骨が変形したり、黄色靭帯が肥厚したりすることで、脊柱管(神経の通り道)が狭くなり、中の神経が圧迫される疾患です。腰や足の痛み、しびれなどの症状が起こります。いわゆる“坐骨神経痛”と言われる症状のほとんどが、この腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアによるものです。腰椎の代表的な疾患で、中高年の方に多くみられます。圧迫される神経の場所によって痛みやしびれなどの現れ方が異なりますが、特徴的な症状として間欠性跛行(かんけつせいはこう)があります。
安静時にはほぼ症状はなく、しばらく歩くと、でん部、太もも、下肢に痛みやしびれ、こわばりが生じて歩行が困難になります。前かがみになったり、腰かけたりして休むと症状が軽減しますが、再び歩き出すと症状が繰り返し現れるというものです。脊柱管狭窄が進行すると排尿・排便障害が起こることもあり、その場合、手術が必須となります。
急性期で痛みが強い時には、コルセットを装着し安静を保ちます。薬物療法では神経周辺の末梢血管を広げて血流を改善する薬剤や神経痛を抑える薬剤を用いて症状の改善をめざします。リハビリテーションや神経ブロックなどを行うこともあります。このような保存的治療を数か月行っても改善がみられず、日常生活に支障が出るような場合には、手術を検討します。脊柱管の狭窄の程度は、レントゲンだけでは診断できません。また、狭窄の程度と症状も乖離していることが多くあります。脊柱管狭窄を疑う症状がある場合は、MRIでの正確な狭窄の診断をお勧めいたします。
背骨が骨折する状態を圧迫骨折と言います。一般的には骨粗鬆症が原因で背骨が脆い状態となり、転倒、尻もちをつくなどの外力だけではなく、咳をするだけや、何も外力が加わっていないのに発症することもあります。1カ所が骨折してしまうと本来、レントゲンで長方形に見える背骨が台形のように前側が潰れてしまい、その上下がドミノ崩しのように次々と骨折してしまう可能性が高まります。
症状としては、腰痛、背部痛、背筋が丸くなるなどがあり、骨折の状態、数によっては体が起こせなくなり、内臓の圧迫などで、息苦しい、胸焼け、便秘などの症状につながることもあります。レントゲンだけで診断がつくこともありますが、MRIでわかる骨折の場合もあります。また、骨折が治ってきているのかの判断はMRIが非常に有効です。
治療は、疼痛の緩和のための消炎鎮痛剤、安静、コルセット、神経痛を認める場合はブロック注射といった保存治療が主ですが、骨折や痛みの程度によっては早期に元の生活に戻れるよう、椎体形成術といった手術治療も選択されます。骨折が治ってきたら、元の生活に戻れるようリハビリテーションを行うことが重要となります。一番の治療は、骨粗鬆症を放っておかずに診断、治療を行うことで骨折の予防をするということです。
思春期の頃から側弯を認めており、徐々に進行してきた成人側弯症と、思春期の頃には全く側弯がなく、経年的に、脊椎の関節や椎間板などが変性することによって側弯が生じた変性側弯症があります。どちらも側弯の大小に関わらず腰痛を認めることがあります。側弯症は成人になると脊柱管狭窄症や圧迫骨折も併発してくるので腰痛だけの症状でもレントゲン、MRIにて正確な診断をお勧めします。
治療は症状に応じて保存治療は、内服、コルセットの装着、ブロック注射やリハビリテーションがあります。保存治療で改善がない場合、狭窄症などが原因で症状が進行性、麻痺などの障害が出現する場合は手術治療となります。手術治療は側弯症の専門病院での治療をお勧めします。当院にご相談ください。
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