側弯症
側弯症

側弯症(そくわんしょう)は、原因が不明で背骨(脊柱)が捻じれてしまう病気です。健康な背骨は、前から見るとまっすぐに伸びていますが、側弯症では「S字」や「C字」のようにねじれを伴って弯曲します。成長期のお子様から大人まで幅広くみられる疾患で、特に思春期に発症するケースが多いとされています。背骨の変形が軽い場合は自覚症状が少なく、学校健診などで指摘されて気づくこともあります。しかし進行すると肩や腰の高さが左右で違って見える、背中や腰に痛みが出る、呼吸機能に影響するなど、日常生活に支障をきたすことがあります。また、重症心身障害のお子様では、側弯症の発生率は非常に高く、当院では専門的に治療を行っております。
早期発症側弯症とは、10歳未満で発症する側弯を指します。特に生まれつき背骨の形成に異常がある場合(先天性側弯症)や、神経・筋肉の病気に伴って起こる(神経筋性側弯症)場合があり、成長に合わせて急速に進行することが多いのが特徴です。思春期に発症する一般的な「特発性側湾症」と比べて、呼吸器や心臓への影響が出やすいためより注意が必要です。症状としては、肩や腰の高さの違い、背中の左右非対称な膨らみ、姿勢の歪みなどが見られます。
進行すると胸郭(胸の骨格)が変形し、肺の発育が妨げられることで呼吸機能が低下するリスクもあります。そのため、早期発症側弯症では見た目だけでなく全身の健康に関わる可能性があります。治療は、軽度であれば装具療法で進行を防ぐことが検討されますが、進行が早い場合や重度の変形がある場合には手術が必要になることもあります。特に成長期においては背骨の発達を考慮しながら治療を進める必要があり、専門的な管理が欠かせません。
特発性側弯症とは側弯症の中でも原因がはっきりしないもののことを言い、その中でも10歳台に発症するものを思春期特発性側弯症と言います。全側弯症の80〜90%を占め,女児の方が男児の8〜10倍多いです。学校検診での指摘が多いですが、肩のバランスや、ウエスト左右差など気になる場合は受診してレントゲンを撮影することをお勧めします。また、家族歴(身内で側弯を指摘されたことがある)のある場合は注意が必要です。
治療は、装具治療(当院ではシェノー装具)が中心になります。成長期に進行するため、当院では側弯が軽度であっても積極的に治療を開始しています。軽度の側弯でも将来腰痛や背部痛などの原因となる可能性が高いためです。年齢は成長期が終了する16歳前後までが適応とされています。早期から装具治療が開始できれば、多くの患者様が手術を回避することができています。
側弯も成長期の体型も変化していくため、装具治療は側弯の専門医が必ず3〜4か月毎にチェックし、その都度修正を加えていきます。不適切な装具や、合わなくなっていてもそのまま使用してしまうと装具治療の効果が失われてしまいます。手術となった患者様の多くは、治療開始時期の側弯が既に40°前後かそれ以上のことが多いため、早期の受診をお勧めいたします。
側弯は急速に進行し、非常に大きな側弯となることが多く見られます。また、成長期以降も進行することが多くあります。装具治療の適応時期は非常に限定的です。矯正装具ではなく、姿勢維持が目的の装具など、不適切な装具治療がなされていることも多くあります。側弯が軽度であっても早期からの受診をお勧めします。軽度の段階から介入することで装具治療を行いながら将来を見据えた治療の選択肢が増えていきます。
手術を選択しなければならないとしても少しでも手術の侵襲やリスクの低減を図ることができます。弯曲が重症化すると、身体のバランスが取れなくなり、座る、立つ、歩くといった基本的な動作の機能を失い、腰痛等の痛みも常時現れる場合が多くなります。また、呼吸、食事、排泄などの機能にも障害が現れ、呼吸器、栄養チューブ・オムツのサポートが必要となります。
側弯症が、いったん重症化すると、側弯症治療を行っても、これらの動作や機能を回復させることが難しくなります。そのため、神経筋性側弯症および症候性側弯症においては、経験豊富な側弯症専門医による早期の評価と治療が非常に重要です。手術治療は、欧米をはじめ多くの国々で患者に大きな利益をもたらすとされ、積極的に行われています。
20歳以降で側弯症が見つかった場合でも、既に思春期の頃から側弯を認めていた場合と、年齢とともに側弯が生じた場合があります。また、骨粗鬆症などに伴って圧迫骨折が発生して側弯が急激に進行したり、高度の後弯(猫背)が生じてしまうこともあります。腰痛、背部痛、神経痛(足の痺れや痛み)などの背骨に伴う症状から呼吸苦、逆流性食道炎、便秘などの呼吸器、消化器症状まで様々な症状が引き起こされることがあります。
まずは、側弯の状態を確認し、比較的軽度であれば、装具治療やリハビリテーションなどの保存治療、骨粗鬆症があれば骨粗鬆症の治療などを行ってまいります。保存治療では改善しない場合は、根本的な治療である手術治療によって、歪んだ背骨を立て直さなければなりません。手術治療も症状の原因となっている一部なのか、背骨全体を治療しないといけないのか専門医の判断が非常に重要となります。間違った治療を選択してしまうとその後の治療ではなかなか改善しないことが多く、初期治療が非常に重要となります。
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